『エピクロスー教説と手紙ー』読書レビュー

哲学

著者:エピクロス

おすすめ度:★★★★☆

エピクロスを知るための原典

エピクロス(紀元前341年 – 紀元前270年)は古代ギリシアの哲学者。快楽を「心の平穏」と定義し、死と神への恐怖からの解放を説いた思想家である。

本書はエピクロスが哲学的同志3人(ヘロドトス、ピュトクレス、メノイケウス)に当てた3通の手紙と主要教説及び遺された断片的な資料からエピクロスの哲学的思想を記すものである。

死と神への恐怖を取り除き、平穏を得る哲学

エピクロスのすごいところは、快の限界は苦しみが全く除き去られた状態、即ち、肉体の苦しみがなく、精神的な悩みのない状態であると言い切っているところである。それゆえ過度な贅沢をよしとはせずに心が平静でいることを目指す哲学となっている。そのための基礎部分の構築のために、エピクロスは自然科学や死(意識)についての知識をしっかりと持つよう示している。

同志3人に宛てた手紙は自然科学や死についての知識が教科書的に書かれているのでかなり読みづらい。読みづらい上に頑張って読んだとしても現在の科学から照らし合わせると間違っている部分もかなりの部分である。しかし、ここで大事なことはその正確性ではない。それらのことを事実をもって考察することにより、自然現象は神のしわざではなく、科学的根拠に裏付けされた出来事としてとらえ、神や死への過度な恐怖を取り去ったことにある。

要因を自分とそのほかに分けて考え、運や不運、他者などの外的な要因に目を向けることなく快楽を追及することを示している。

エピクロスは快の限界を平静な状態と言い切ってはいるが、快を感じることまでは、否定していない。快を求めすぎて平静から遠ざかることを否定している。エピクロスの終生変わりない倹約的な生活がその教説に説得力をもたせている。

まとめ

SNSの普及により、次々と欲求を駆り立てられる現代。エピクロスの快の定義はその欲求に歯止めをかけ、当たり前の幸せに気づくためのきっかけとなる力を秘めている。

私自身。仕事や生活場面で心が苦しくなる時には、その苦しさの反動から過度な快楽を得ようとする方向に舵を切っていしまっていた自覚がある。「まだまだもっと楽しいことがあるはず」と快楽に翻弄されてそのために働きさらに苦しくなるを繰り返してきた気がする。

エピクロスの快の定義は、そうした過剰な欲望に歯止めをかけ、「足るを知る」ことの価値を思い出させてくれる。苦しみが取り除かれ、心が平穏であること。それこそがすでに十分に幸福な状態である。

原典ゆえに読みやすい本ではない。しかし、現代に生きる私たちにとっても示唆に富む一冊である。ぜひ手に取り、自らの幸福の基準を問い直してほしい。

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