『咲良は上手に説明したい!』読書レビュー

た行

著者:滝沢志郎
おすすめ度:★★★★★
読みやすさ:★★★★★

「説明がうまい人」と「伝わらない人」の違いは何か?
トリセツ作りから広がる感動の物語
胸躍るお仕事小説

『咲良は上手に説明したい!』あらすじ|テクニカルライター視点のお仕事小説

主人公の咲良は大学卒業後、営業職として採用される。性格的に不向きな職業を選んでしまったがために、メンタルを壊し、あえなく退職してしまう。

退職後、短期のアルバイトとして駅員として働くことになった咲良。ある日、台風による暴風と大雨による影響でダイヤが大幅に乱れる。運行状況を示す掲示板の内容は無駄が多く分かりにくいため、乗客からの質問が掲示板近くに立つ咲良に殺到する。

説明に追われ窮地に立たされた咲良を尻目に、ある女性が掲示板に書かれた内容を鮮やかに書き換える。その内容は分かりやすく、乗客は示された内容をもとに各々が自律して動き始める。書き換えた女性は咲良のお礼もそこそこに名刺を咲良に手渡し立ち去っていく。名刺に書かれていたのは、”テクニカルライター”という肩書。”テクニカルライター”——それは「分かりやすく伝える」ことを仕事にする職業。”テクニカルライター”との運命的な出会いを果たした咲良は名刺を頼りに女性・浅倉響の努めるマニュアル制作・文書作成の老舗企業であるFTCへと履歴書を送る。

『咲良は上手に説明したい!』感想|読むだけで説明が上手くなる

テクニカルライターの本質は「分かりやすく物事の本質を伝える」こと。

本書では、シェアオフィス・AED・ベビーカー・トイドローンのトリセツ作りに奮闘する咲良を連作短編として描かれている。

暮らしに密着しているテーマも多く、興味を持って読み進めることができる。

著者である、滝沢志郎さん自身が小説家であり、テクニカルライターであるので、テクニカルライティングの専門的知識も平易に語られている。そのため、「一文一義」や「ナラティブ(相手の物語)」など文章力を高める要素が小説のそこここに散りばめられている。それだけでなく、説明書の実際のレイアウトが示されているので、良い例・悪い例の比較も分かりやすい。また、各商品の企業側の熱い想いも汲み取っている。特にトイドローンの製作者の願いなどは、軍事利用による悲しい記事を多く見かける昨今、大いに考えさせられる内容であった。

小説としても面白い上に分かりやすい文章を書くヒントも得られる一挙両得のお仕事小説。

私自身教員という職業柄分かりやすい説明をすることに日々悩まされている。

相手の目線に立つことを心がけているが、「ナラティブ」相手の”物語”という部分に想いを巡らせることができていなかったことを本書を通して気づくことができた。

『咲良は上手に説明したい!』まとめ

小説としての面白さと、実用的な学びを同時に得られる稀有なお仕事小説。

仕事をする上で分かりやすい説明をすることは欠かせないスキルである。

特に、次のような人には強くおすすめしたい

・仕事で説明する機会が多い人

・ブログや発信をしている人

・教育に関わる人

本書を読むことで技能を一つ上に引き上げることができるはず。

堅苦しい解説本では今一つイメージが湧かず、頭に入ってこないもの。

新人の咲良と共に、「伝える」という行為の本質に触れられる一冊である。

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