『熟柿』読書レビュー

さ行

著者:佐藤正午
おすすめ度:★★★★★

若き日に犯した罪。
懸命に生きようとするのに、いつも罪が追いかけてくる。
それでも、生きるしかない。
柿が熟して落ちてくるのを待つように―――


犯した罪と向き合う17年の物語

妊娠中にひき逃げの罪で服役を余儀なくされたかおり。

服役中に出産し、離婚。

息子と引き裂かれる。

会わせてもらえない焦りから、連れ去り事件まで起こしてしまう。

罪を逃れるように仕事と住む場所を変えていくかおり。

どこに行っても罪が追いかけて生活を邪魔してくる。

罪と向き合う女性の17年の物語。

犯した罪の重さを突きつける重たい筆致

新聞、テレビにインターネット。様々な媒体で日々多くの情報を得られる昨今。傷害、殺人、窃盗など罪に触れる機会が多く存在する。しかし、得られる情報はあくまで二次情報であり、実感に乏しい。そして、罪を犯した人のその後を考えることなどほとんど無い。あったとしても具体性に欠けたもので無責任。

本作は主人公のかおりがひき逃げをするところから物語が始まる。

服役しても、終わらない。

罪は刑期よりも長い。

自責の念と周りからの軽蔑の目。変わり果てた生活が襲う苦しみは読んでいて辛くなる。

ともすれば自殺を考えたくなるような状況でも主人公はただひたむきに生きていく。息子という光を道しるべにするように。

物語全体を通して派手な展開や爽快感のある結末が待っているだけではない。

しかし、「熟柿」という題名に込められた作者の意図を知ることによりどこか救われた気持ちになる作品。

うまくいかず苦しい時があっても熟した実が落ちてくるのを懸命に待つ大切さを感じることができる長編小説であった。

まとめ

罪を犯した女性の生涯にスポットを当てた、苦しい物語。

しかし、ただ苦しくなるだけではなく作者なりの意図が感じられる光や温かさを感じ取ることのできる作品。

人の犯す罪の重さとそれを許さない人々の厳しさ。

処罰感情の高まる昨今の情勢を反映しているといえる。

しかし、そんな中でも助けになってくれる人々。

それでも待ってくれている人たち。

物語の最後は読み手によりその色合いを変える。

読んで終わりではなく、深い問いを残す。

あなたは、彼女をどこまで許せるか。

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