著者:東野圭吾
おすすめ度:★★★★☆
これは、犯人探しの物語ではない。
読み終えたときに残るのは、“沈黙の重さ”。
東野作品をこれまで数多く読んできた。
それだけに自然と自分の中のハードルも高くなっている。
だからこその★★★★☆。
それでも、この一冊が胸に残した余韻は大きい。
加害者の息子と被害者の娘 ―― 交錯する想い
港区の海岸で発見された刺殺体。
被害者は弁護士・白石健介。
捜査の末に浮かび上がったのは、愛知県在住の倉木達郎。
疑いがかかるなか、彼は突如として自供する。
それは今回の事件だけでなく、1984年の冤罪事件までも自らの犯行だという衝撃的な告白だった。
父の自供によって世間の矢面に立たされる息子・倉木和真。
一方で、被害者の娘・美令もまた、父の過去に違和感を抱く。
本来なら交わることのない二人が、
「父親の罪」という一点で交錯していく。
やがて浮かび上がるのは、単なる事件の真相ではない。
過去から続く“罪の物語”だった。
倉木達郎がひた隠しにする秘密
物語の緊張感は、犯人探しだけではない。
読者が引き込まれていくのは、「なぜ彼は語らないのか」という一点だ。
倉木の一連の行動が少しずつ形を帯び、真実へと近づいていく過程は見事。
ページをめくる手が止まらない。
容疑者Xの献身に通じる、人間の選択を軸にしたミステリー。
トリックの巧妙さ以上に、登場人物の感情が物語を動かしていく。
派手な小細工はない。
だからこそ、文章は読みやすく、物語に没入できる。
気づけば一気に読み終えてしまう。
まとめ
真実を語らない父親の守りたいもの。
その秘密の重さに打ちのめされる。
それでもなお、語らないという選択は罪だったのか。
重さを抱えながらも、どこか救われる感覚が残る。
ヒューマンドラマとミステリーが静かに融合した一冊。
東野圭吾作品が好きな人はもちろん、
「正しさ」と「沈黙」のあいだで揺れる物語を読みたい人に、ぜひ手に取ってほしい。

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