同志少女よ敵を撃て

著者:逢坂冬馬

悲しみ・怒り・恐怖・恐れ。戦争はそれらの負の感情をぐるぐるに混ぜて人々を狂わせていく。
1942年の独ソ戦の最中のモスクワ近郊の村。
本書はこの村がドイツ軍の襲撃を受けるところから始まる。
ドイツ軍により村人は次々と殺戮されていく。村人が最後の一人となった時、ソ連赤軍により、ドイツ軍が撃退される。
唯一の生き残りとなった少女セラフィマは村が燃え落ちていく中、赤軍の女兵士イリーナにこう問われる。
「戦いたいか、死にたいか。」
戦うことを決めたセラフィマは狙撃兵として育てられやがて激戦地へと送られていく。
女性狙撃兵を通して語られていく戦争は生々しく、戦争の悲惨さをこれでもかと感じさせる。
殺される恐怖と殺す日常。それらいびつな毎日が戦争へと向かう者を狂わせていく。
第二次世界大戦を日本以外の視点から日本人が著者となって語られることはあまりないので、とても興味深かった。
読み物としても完成度が高いが、戦争の悲惨さを学ぶことに対してもおすすめの一冊。
ロシアとウクライナの戦争が起こっているこの時にこの小説を出す逢坂さんの気迫が感じられる。
この小説が伝えたいことが世界に広がり戦争がなくなることを切に願います。

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