著者:吉田修一|おすすめ度:★★★★☆
🎭 極道の血を背負い、芸の頂を目指した少年の一生
長崎の抗争で父を失った少年・喜久雄。
身寄りをなくした彼は、父と縁のあった上方歌舞伎の名門・花井家に引き取られ、梨園の世界へと足を踏み入れる。
サラブレッドである花井半次郎の息子・俊介とともに、芸の道を切磋琢磨しながら歩む喜久雄。
しかし、彼の中に流れる“極道の血”が、幾度となくその道を阻む。
本書は、芸と血、宿命と選択、友情と嫉妬が交錯する、壮大なヒューマンドラマです。
🔥 芸の世界に生きる者の覚悟と孤独
俊介との対比を軸に描かれる喜久雄の人生は、常に揺れ動いています。
ライバルとして、嫉妬の対象として、そして時に深い友情を育む存在として、二人の関係は物語の核となります。
芸の頂に近づくほど、遠ざかっていく“人としての幸せ”。
頂点に立った喜久雄が見る景色は、常人には到底理解できない孤高の世界。
読了後、胸に残るのは言葉にならない感情——それは感動なのか、尊敬なのか。
🌸 梨園という舞台で描かれる、魂の軌跡
歌舞伎という伝統芸能の世界を舞台に、
一人の少年が運命に抗いながら芸に身を捧げる姿は、
読む者の心を深く揺さぶります。
読後、飲み下すまでに時間がかかりしばらく動けなくなりました。
**「芸とは何か」「生きるとは何か」**を問いかけてくる、魂に響く一冊です。
ぜひ、あなた自身の感情でこの物語を味わってみてください。

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