著者:アンドリュー・スコット
おすすめ度:★★★★☆
退職年齢の引き上げや年金受給額の減少が現実味を帯びるなか、長生きリスクに不安を抱く人は少なくないでしょう。
かくいう私もその一人で、未来への希望が見えず、医療に頼って延命するだけの人生に意味があるのか疑問を感じていました。
本書は、そうした不安に正面から向き合い、新しい生き方の指針を提示してくれます。平均寿命は年々延び、今の20歳世代では100歳まで生きる可能性が高まっています。その結果、従来の「60歳以降を余生とする」ライフプランは通用しにくくなり、人生観そのものの転換が必要になってきています。
著者は豊富なデータを用い、人生100年時代に求められる思考法と戦略を解説します。その要点は、「健康寿命を寿命に近づける」──“ピンピンコロリ”の実現です。単に医療で延命するのではなく、老化科学や予防策によって健康に長生きすることを目指します。また、長寿化は高齢化問題ではなく、社会全体の課題として捉えるべきだと説きます。
私にとって特に印象的だったのは、仕事との向き合い方です。健康寿命を延ばし、人生を楽しむには資産形成も大切ですが、寿命や経済の不確実性を踏まえると必要額を正確に見積もるのは困難です。そこで本書は、資産への投資だけでなく**「健康への投資」**を強調します。その一環として、キャリアの途中であえて仕事を離れる期間を設ける戦略も提案しています。シャカリキに働き仕事を徐々に仕事を縮小していくことしか考えていなかった自分にとっては目からうろこの内容であった。
本書は、人生100年時代を多角的に描き出し、読む人それぞれに異なる気づきを与えてくれます。高齢化は高齢者だけの問題ではありません。豊かな未来を共に考えるために、多くの人に手に取ってほしい一冊です。
コメント