『カササギ殺人事件』読書レビュー

アンソニー・ホロヴィッツ

著者:アンソニー・ホロヴィッツ|おすすめ度:★★★★★

🕵️‍♂️ 小説の中と外で展開する、二重構造の本格ミステリー

物語は、出版社クローヴァーリーフ・ブックスの編集者スーザン・ライランドが、人気作家アラン・コンウェイの最新作「カササギ殺人事件」を読み始めるところから始まります。
その小説は、1955年のイギリスの田舎町で起こる殺人事件を、名探偵アティカス・ピュントが解き明かすという内容。

しかし、物語の終盤に差し掛かったところで、スーザンは最終章が欠けていることに気づきます。
真相を知るために著者の元を訪れた彼女は、アラン・コンウェイが自殺していたという衝撃の事実を知らされます。

📚 二つの世界が交差する、入れ子型構造の妙

本書は、アランが描いた小説世界と、スーザンが生きる現実世界の両方で物語が進行します。
小説内では、ホームズやポアロを彷彿とさせるクラシカルな探偵劇が展開され、
一方で現実世界では、編集者スーザンがアランの死の謎を追う現代的なサスペンスが描かれます。

文体も世界観もがらりと変わるため、まるで二つの異なる小説を読んでいるような錯覚を覚えますが、
やがて両者の物語が交差し、ひとつの結末へと収束していく展開は圧巻です。

🧩 ミステリーへの愛と革新が詰まった一冊

探偵小説への深いリスペクトを感じさせながらも、入れ子構造によって新しさも感じさせてくれる本書。
古典と現代の融合が見事で、ミステリー好きにはたまらない一冊です。

「探偵が謎を解く」だけでは終わらない、
“物語そのものの構造”が謎を生むという、知的好奇心をくすぐる作品。
ぜひ、ミステリーを愛するすべての人に読んでほしい傑作です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました