著者:門井慶喜|おすすめ度:★★★★★
👨👦 父の視点から描かれる、宮沢賢治という人間
「銀河鉄道の夜」「注文の多い料理店」「雨ニモマケズ」などで知られる宮沢賢治。
その作品は教科書にも載っていて広く知られているものの、彼自身の人物像はどこか神格化され、実像が見えにくい——そんなもどかしさを感じていたときに出会ったのが本書です。
本書は、賢治の父・政次郎の視点から、賢治の生涯を描いたヒューマンドラマ。
家業の質屋を継がせたい父と、芸術や宗教に傾倒し、定職に就かない息子。
父としてどう接するべきか、厳しくするか、見守るか——その葛藤が丁寧に描かれています。
🏠 家族の物語としての普遍性
舞台は戦前の裕福な家庭ですが、親子のすれ違いや期待と失望、そして理解と愛情は、現代の家族にも通じるものがあります。
父の視点を通して描かれる賢治は、決して“聖人”ではなく、悩み、迷い、もがく一人の人間。
その姿に触れることで、彼の作品に込められた思いや背景がより深く感じられるようになります。
🌌 賢治の世界に、もう一歩近づくために
神格化された賢治像を解きほぐし、身近な存在として感じられる本書。
文学としてだけでなく、家族の物語としても心に残る一冊です。

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