『絶望の哲学者ショーペンハウアーの幸福論 求めない練習』

哲学

著者:カン・ヨンス
おすすめ度:★★★★☆

ショーペンハウアー流幸福論

哲学の地図を作っていくに向けて、
ドイツの哲学者ショーペンハウアー(1788–1860)の幸福論について書かれた本書を手に取った。

人嫌いで偏屈。
厭世主義者(ペシミスト)として知られることの多い人物だが、
本書を通してあらためて触れてみると、そのイメージはかなり濃い。

ショーペンハウアーは、人生は基本的に苦痛だらけのものだと考える。
そして、その苦痛が取り除かれたとしても、
次に顔を出すのは倦怠である。
それゆえ人生は「苦痛と倦怠を行き来する振り子」のようなものだとたとえ、
かなり悲観的なスタンスを取っている。

では、そんな世界観の中でどう生きればいいのか。
ショーペンハウアーが語る幸福とは、
何かを手に入れて幸せになることではない。
むしろ、期待や欲望をふくらませすぎず、
人生をより不幸にしないように生きること
に近い。

幸福に生きようとするとは、
苦痛を完全に取り除くことではなく、
無駄な苦痛を増やさないこと。
そのためには、日々を黙々とやり過ごす覚悟も必要になる。

彼は、そのための具体的な指針として次のようなことを挙げている。

  • 自分にできること・できないことを見極め、個性に合った仕事や生活スタイルを身につける
  • 過去を振り返りすぎず、未来を先読みしすぎない
  • 心身の健康を保つ
  • 自然や芸術に触れ、欲望から一時的に距離を取る

これらは幸福を保証する方法というより、
人生を少しでも楽に生きるための現実的な工夫だと感じた。


40代を生きる者へのエール

本書は、ショーペンハウアーの言葉を通して、
筆者が40代に向けてエールを送るような構成になっている。

自信や希望を推進力にして走ってきた若い時期が終わり、
人生の停滞を感じやすくなる40代。
その現実に戸惑い、苦しむ人にとって、
本書は現実的なヒントを与えてくれる一冊だと思う。

苦痛をひと通り味わい、
上手な慰めや前向きな言葉に少し疲れてしまった人には、
かなり刺さる内容だろう。

一方で、希望を胸に日々を送っている人にとっては、
悲観的すぎて足を引っ張られると感じるかもしれない。

読んでいて
「ちょっと陰鬱すぎるな……」
と感じたら、無理に読み進めなくてもいい。
そっと本を閉じて本棚に戻し、
人生に行き詰まったときのための一冊として取っておくのがおすすめ。


40代の私的観点

人生を「苦痛と倦怠を行き来する振り子」にたとえる感覚は、
40代を生きる今の実感とよく重る。

苦しい時期に入ると、
どこかに極端に幸福な人生があるのではないかと思い込み、
生活をそちら側へ一気にシフトさせようとしてしまう。
けれど当然、そんなこともなく、
またしても絶望する――
そんなことを繰り返してしまう。

ショーペンハウアーの考え方は、
そうした幻想に静かにブレーキをかけてくれる。
苦痛をなくそうとするのではなく、
苦痛を増やさないようにコントロールする
その視点は、よりよい人生を生きるためのヒントになった。

今後は別の哲学にも触れながら、
それぞれの哲人の思想を手がかりに、
自分なりの哲学を少しずつ描いていきたい。

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