『NHK100分de名著 バートランド・ラッセル 幸福論』

哲学

著者:小川仁志
おすすめ度:★★★★☆

ラッセル流幸福論

バートランド・ラッセル(1872ー1970)はイギリスの哲学者。
数学者であり哲学者。20世紀最高の知性との呼び声高いラッセル。
キャリアの前半では数学者として活躍し、「プリンキピア・マテマティカ」(数学原理)を出版。
中盤以降は政治・平和活動に邁進し、理想とする自由主義教育を行うために、学校まで創設してしまう。
そして、55歳には「幸福論」、83歳の時には核兵器の廃絶と科学技術の平和利用を訴える「ラッセル=アインシュタイン宣言」を発表する。
とにかく活動的で推進力が常に前に向けられていてポジティブな人物である。

そんなラッセルの哲学は実践的で、天才が頭の中だけで思考を巡らせた哲学とは違い、
具体性があり、分かりやすい。その分神秘性は薄く、理屈の通った実践哲学としてハウツー本のように取り入れやすい。

ラッセルが言うには、
不幸は「自己への過度な内向き」から生まれる。
不幸になるほど人は自分の内面に囚われやすくなり、

・他人の評価が気になる
・過去の失敗を反芻する
・「自分は不幸だ」という物語を育ててしまう

ようになる。

ここで言う「内向き」とは、冷静な自己反省や内省ではなく、
自己憐憫や自意識過剰といった、感情に支配された状態を指している。

逆に、ラッセルは
「外向きの関心」を持つ人ほど幸福になりやすいと述べる。
その対象として、

・仕事や知的探究
・他者との関係
・趣味や自然
・愛情を注げる対象

などが挙げられている。

また、不幸を司る近代病として、競争・比較・成功崇拝を挙げている点も印象的である。


幸福を追求した実践的哲学書

本書は2017年に放送された「100分で名著」のテキストをもとに、小川仁志さんがラッセルの言葉を引用しながら、現代版として分かりやすく書き出してくれている。

SNSや変化が激しく不安の多い現代社会の問題に目を向けつつ、「幸福論」のエッセンスを、今を生きる私たちが実践できる形へと落とし込んでくれる内容になっている。

巻末にはウィズコロナ時代を生きる人たちに向けた「幸福論」の活用法も紹介されており、読む人がラッセルのマインドにならって、前向きに一歩を踏み出せる構成になっている。


40代男性教員的視点

内に籠らず外に目を向け、競争・比較・成功崇拝を避け、趣味や仕事に集中することを説く点は、実はショーペンハウアーと大きく異ならない。
それでも、語る人物が違うだけで、これほど受け取る印象が変わるものかと思った。

ショーペンハウアーは、暗闇の中から小さな炎を見つけ、それを必死に守り続けるイメージ。
一方でラッセルは、周囲が明るかろうが暗かろうが、自分のやるべきことに集中し、ひたすら前に進んでいるうちに、結果として幸福を手にしているように感じられた。

どちらも非常に大切な哲学であり、自分の置かれている状況によって、受け取りやすさは変わるのだと思う。
二人が歩んだ人生の違いが、そのまま思想に反映されていると言える。

ショーペンハウアーが人を選ぶ哲学だとすれば、ラッセルの哲学は実践的でオールラウンダー。
最初に読む哲学書としてはこちらの方が分かりやすい。

「幸福論」そのものもそうだが、ラッセルの歩んだ道のりにも勇気づけられる。
自分がうつうつと苦しんでいた原因が、競争・比較・成功崇拝に根差していることに、改めて気づかされた。

特に、
「周りが幸せであると自分も幸せでいられる」
というラッセルの考え方は、以前から自分自身も感じていたことであり、これからも大切にしていきたいと思う。

成功はしているが、競争に疲れてしまった人に、特におすすめしたい一冊である。

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