著者:ブライアン・クラース
おすすめ度:★★★★☆
読みやすさ:★★☆☆☆
私たちの人生は偶然に翻弄されるだけなのか。それとも小さな行動で世界を変えられるのか。
『「偶然」はどのようにあなたをつくるのか』内容|世界はコントロール可能なのか
「私たちは世界に対して無力なのか、それともある程度コントロール可能なのか」という問いをカオス理論、進化生物学、歴史、哲学などの広い知見を用いて問う重厚な一冊。
最初の問いに対して「世界は小さな偶然の積み重ねによって出来上がっており、予測することもコントロールすることもできない。」というのが本書の回答である。
その回答を導き出すために多様な過去の事柄を例に挙げ理論を積み重ねている。
私たちの行動は相互に干渉しあい、自分の取った小さな行動が思わぬ結果をもたらす。
さながらそれはカオス理論で有名な「バタフライ効果(小さな原因が大きな結果を生む現象)」のように、それが何を意図した行動であろうと行動を起こした本人の思惑を飛び越えて良い結果にも悪い結果にも干渉しうる。
同じ行動を起こしたとしても、行動する人間の特性、場所、時間によってその影響の大きさは変化する。ゆえにそれらを予測しコントロールすることは到底不可能である。
今日あなたが朝ごはんを食べたという小さな行動が、巡り巡って誰かの命を救うこともあれば、逆に奪ってしまうことさえありうる。
人の無力さと一つの行動の大きさ。一見すると相反するように感じる考え方を説いたのが本書『「偶然」はどのようにあなたをつくるのか』である。
『「偶然」はどのようにあなたをつくるのか』感想|人は無力であるが価値がある
「世界は小さな偶然の積み重ねによって出来上がっており、予測することもコントロールすることもできない。」という結論を多くの情報で論じている本書。正直「もう分かった。お腹いっぱいです。」とは思いながらも数々のストーリーを提供してくれるので、飽きずに読むことができる。
著者のオタク気質の強さから説明の合間にいらぬ合いの手が入っているために少し読みづらいのはたまにきずではあるが、それを補って余りあるほど本書で得られるものは絶大。
「世界は予測不可であるゆえにコントロール不能。」
「一人一人が影響を及ぼしあっているので幸も不幸も避けようが無い。」
と一見ネガティブに思える事実であるが、本書はそこに絶望を見出していない。
むしろだからこそその偶然性の上にこの世に生まれ出た命の一つ一つは奇跡的であり、価値がある。
だからこそ自分が起こした行動には世界に対して影響がある。
胸を締め付けられるような不幸は避けようがない。
しかしその不幸が巡り巡って、その後の幸福につながることもある。
読むことにより幸も不幸も受け入れられる。
今不幸の最中にいる人には過去に執着することなく未来に目を向けるきっかけを与え、
今幸せの最中にいる人にはその幸せを感謝する心をもたらす力強いメッセージを感じさせてくれる内容だった。
まとめ
本書は「私たちは世界に対して無力なのか、それともある程度コントロール可能なのか」という問いに対して確かな答えを示すものとなっている。
その答えは一見無常に感じるが、確かな希望も見出せる内容となっている。
本書は、
・自分の行動に諦めを感じ何をしても無力に感じてしまっている。
・自分に価値が無く歯車として生きていくのに辟易している。
・不可避な絶望に打ちひしがれている。
・自分の行動がどのように世界と繋がっているのかを知りたい。
・小さな行動が歴史に及ぼした大きな影響について知りたい。
人におすすめの一冊。
世界は偶然の積み重ねであり、私たちはそれをコントロールすることはできない。
しかし同時に、私たちの小さな行動は確かに世界に影響を与えている。
人は無力である。けれども、決して無価値ではない。
そのことを強く実感させてくれる一冊だった。
偶然に満ちた世界を、それでも前を向いて生きていこうと思わせてくれる本である。

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