著者:嶋津輝
おすすめ度:★★★★★
読みやすさ:★★★★★
「重すぎない戦争小説を読みたい」
「人の強さに静かに励まされたい」
そんな方におすすめなのが、嶋津輝さんの『カフェーの帰り道』です。
カフェで働く女給の目から見た戦前・戦後の世界。
辛い世の中を力強く生きるヒントがそこにはある。
『カフェーの帰り道』あらすじ|強かに柔軟に生きる女性の生き様
東京上野でひっそりと営業する「喫茶西行」。カフェであり食堂である西行は、近隣住民の憩いの場となっている。西行で働く個性豊かな女給たちがリレー形式で紡ぐ連作短編小説。
戦前のほのぼのとした世界から時を経るごとに戦争の暗い霧が絶ちこみ始めやがて戦中・戦後の時代へ。
長い激動の中でも、オーナーの人徳によって「喫茶西行」は変わらず優しく存在し続ける。そこで働く女給たち。描かれるストーリーは時代や女給キャラクターにより違った色彩を見せる。
しかし、しなやかな強さはすべての登場人物に共通で物語の芯を強く支えている。
女給ごとの世界が喫茶西行を礎に離れたり交錯しながら紡がれていく。
戦況が悪化する中、戦争へと赴く人達。そんな苦しい中でも日常を手放さない女給の生き様が印象的。
派手なドラマはなくとも、「生きること」を丁寧に積み重ねる姿が胸に残る作品でした。
『カフェーの帰り道』感想|女給だから見える戦前・戦後の世界
喫茶西行で働く女給たち。オーナーの奇特な性格からそこで働く女性のキャラクターは様々。時代ごとに主役の女給が変わっていきながらも喫茶西行を中心に女給の世界が緩やかに繋がっていく。戦前から戦後までを描いており、だんだんと世界の雲行きが怪しくなっていき、生活も苦しくなっていく。しかし、戦時を描く小説でありがちな後ろ向きな停滞はそこにはない。時代に翻弄されながらも力強く生きる女給たちに停滞はない。迷いながら傷つきながらも先の見えない世界を一歩ずつ進んでいく。
周りに翻弄され思い通り行かないのはいつの時代も同じ。
戦争という困難な時代を過ごした女給たち。だからこそその生き様からは今の時代を生き抜くヒントが満載。
筆者のもつ軽やかな文体も手伝って読むだけで心地よくなる優しい小説でした。
『カフェーの帰り道』まとめ
第174回直木三十五賞受賞作。
・忙しい日々の中で、心を落ち着けたい人
・重すぎない戦時の文学作品が読みたい人
・読みやすい連作短編小説が読みたい人
におすすめの一冊。
力強く生きる女給たちからは得られるものも多いです。
優しい気持ちに包まれる木漏れ日のような小説。
静かに背中を押してくれる一冊です。気になる方はぜひ手に取ってみてください。

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