『月がきれいな夜に誰かに思い出してほしかった』|「愛されない自分」を手放すための物語 

か行

著者:川代紗生
おすすめ度:★★★★☆
読みやすさ:★★★★★

”元カレごはん埋葬委員会”
失恋の記憶を「料理ごと」埋葬する、少し不思議でやさしい集い。

『月がきれいな夜に誰かに思い出してほしかった』あらすじ|思い出ごはん埋葬します

三軒茶屋の喫茶店で開かれる”元カレごはん埋葬委員会”。

失恋の記憶とともに「思い出の料理」を食べて手放していく場所だ。

婚約寸前で振られた桃子も、元カレとの「茶碗蒸し」を埋葬することから物語は始まる。 

全7章の連作短編の構成になっており、各章一品ずつごはんが埋葬される。章末には埋葬されたごはんの本格的なレシピもついている。

参加者が持ち寄ったレシピをもとに桃子がごはんをつくり、食べることで思い出を浄化していく。

”元カレごはん埋葬委員会”での交流をもとに少しずつ前進していく桃子。

”結婚”という幸せを願う父に示す答えとは。

『月がきれいな夜に誰かに思い出してほしかった』感想|他者が求める幸せと自分の求める幸せ

「愛そうと努力しても愛せなかった」ことを理由に婚約破棄となる桃子。

ド頭から痛烈な失恋経験をする主人公に思わず自分を重ねてしまう。

周りが求める幸せに流されるまま恋愛をしてしまったことが誰しもあるのではないか。

桃子もその中の一人。

早くに亡くした母親の願いは「愛する人を見つけて家族を作ること」。父親はその母の願いを叶えようと桃子に結婚を期待する。

そんな背景がありながらも冒頭の婚約破棄の一幕である。

”元カレごはん埋葬委員会”で元カレとの想いを払拭し次の恋を探す桃子。

婚活を続けながらも常につきまとうのは、

「愛されない自分は不完全なのか?」

という思い。

”元カレごはん埋葬委員会”で他者の恋愛に共感をしめしていく桃子。

それらの出会いが桃子の考えに少しずつの変化をもたらしていく。

幸せを願う父親に桃子が示す答えはたくさんの人達を恋愛レースから降ろしてくれる優しいものだった。

私自身も、結婚までの道のりが長かった。

周りがとんとん拍子に結婚していく中で、

「誰からも愛されない自分」に価値があるのか悩んだこともある。 

そんな時に是非出会いたかった本。かつての自分の心境を言語化してくれている良本だった。

『月がきれいな夜に誰かに思い出してほしかった』まとめ

人から愛されない私はダメな人間なのか?

本書の根底に常に流れているテーマはこれ。

そのテーマに対するツールとして”元カレごはん埋葬委員会”を通して桃子は人生を考えていく。

読んだ後には同じ悩みを抱える人の荷物は少し軽くなっているはず。

載っているレシピ通りに料理を楽しむ副産物もありながら読み物としても面白い。

恋愛に疲れたとき、静かに寄り添ってくれる物語でした。

 

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