著者:柚木麻子
おすすめ度:★★★☆☆
読みやすさ:★★★★☆
『BUTTER』あらすじ
金をだまし取った男たちが次々に死んでいき、3件の殺害容疑で逮捕された梶井真奈子。
パトロンが次々に不審死を遂げたこと以上に世間の注目を集めたのは、彼女の容姿。
容姿の美しくない彼女が男どもを虜にできたのは何故なのか?
週刊誌で働く女性記者・里佳は梶井の取材を始める。
取材を通して梶井との面談を重ねる里佳。
梶井の怪しげな魅力に翻弄されながら里佳は記事を完成させるべく彼女の本質を探っていく。
『BUTTER』感想
「英訳がイギリスで4冠、世界40か国で翻訳され累計170万部」という話題性に飛びついて本書を購入。
梶井の面談を続けながら3件の殺人容疑を立証していくようなミステリーを想像していたが、全く違った。
本書の関心は事件の真相ではなく、「女性が社会の中でどう見られ、どう生きるか」に向けられている。
「美しくない女性が男たちを魅了することができたのはなぜなのか?」
という部分をフックにして、女性の生きづらさを浮き彫りにしていく社会派文学小説だった。
出版社で男性社員たちと肩を並べて競争している里佳と、
旧来的な女性らしさを押し出して、男どもを誘惑していった梶井。
両者の対比が社会進出を果たした女性の苦しみを浮き彫りにする。
多くの問題提起を行いながらも、明確な答えを提示しないあたり文学性が高く、世界的にベストセラーになったのもうなずける。
逆に言えば3件の殺人事件についてはなんの解決も図られていないので、うっかりミステリー小説だと思って読んでしまうと壮大な肩透かしを喰らってしまう。
かなりのページ数を割いて女性の生きづらさを文字化しているので、共感できる人にとっては
「自分の苦しみを代弁してくれている」
と感じられる内容である。
半面、エンターテインメントとしてこの作品を読んでしまうと間延びした印象を受けてしまう。
読み手によって、またその読み手の意図によって面白さが変わってくる小説だと感じた。
『BUTTER』まとめ
この小説は本格ミステリーではありません。
殺人事件を入り口に、女性の生きづらさを描いた社会派文学です。
女性の社会進出にどこか生きづらさを感じていて、
「誰かこの生きづらさを文字化して!」
と熱望している人にはかなり刺さる一冊。
実際にあった事件を下敷きにしているので、この小説が発するメッセージは毒にも薬にもなり得る。
取り扱い注意の小説です。

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